第2話 銀河の三銃士
地球と月の間にて・・・
光り輝く3色の光が衛星軌道上に漂っていた。
いや、ただの光ではなかった。それらは「意思」を持っていた。
――なぁ、ホントにこの星でいいのか?――
不意に、地球を眼下に見下ろしながら青い光が言葉を発する。懐疑的な声音だ。どこか軽薄そうな感じも与える声だった。
――うむ、この星で間違い無いであります!――
別の黄色い光がその疑問に答えた。こちらは軍人口調で硬いイメージを人に与える。
――確かに、ゼクサーの反応がある。この星だ。――
残る緑の光も合いの手を入れた。そう、彼らは宇宙銀河連邦の戦士達―ゼクサーの同僚だった。
――そっか。グランの言う事はともかく、ビッグの旦那が言うなら間違いねぇな。――
最初に疑問を口にした青い光が言う。その一言に黄色の光が反応した。
――なんだとマッハガンナー!この自分のスキャンが間違っているとでも!?――
マッハガンナーと呼ばれた青い光が答える。相手の言う事をまるっきり信じていない。
――ったりめーだ。てめぇの言葉が信用できるか!――
――貴様!自分を侮辱する気か!――
黄色の光―グランガンナーが怒鳴る。たちまち2つの光は言い合いを始めた。
――だいたいテメェが・・・――
――それなら貴様も・・・・・――
――いやお前・・・・――
――ふざけるな!・・・・――
――・・・・・・!!――
――・・・!・・・・・!?――
――やるかテメェ!?――
――貴様、上等だ!――
2人の口論は収まりそうにない。ついには殴りあい、という所でたまりかねて緑の光を放つビッグガンナーが2人を止めた。
――止めろ2人共!こんな所で言い争ってどうする。今はゼクサーの居所を捜すのが先だろう!――
止められたマッハガンナーが口ごもる。だだをこねる子供のようだ。
――だ、だってよ旦那・・・コイツが・・・――
――ビッグガンナー、悪いのはあっちであり・・・――
グランガンナーの言葉を遮りビッグガンナーが怒鳴った。
――いいかげんにしろっ!!――
グランガンナーが身を硬くする。人間なら敬礼しているところだ。
――も・・・申し訳ありませんビッグガンナー!――
ビッグガンナーが溜息をついた。毎度のことだ。この二人は仲が悪く何かあればすぐケンカを始めてしまうのだ。
――ふぅ・・・ったくお前らはどうしていつもこう・・・。まぁいい。とにかく降りるぞ。――
いいかげん呆れ返った声でビッグガンナーが2体を促す。マッハガンナーが気の無い返事を返した。
――へいへい。了解。――
ビッグガンナーの指示にグランガンナーも従った。
――了解であります!――
ビッグガンナーが2人に聞こえないように一言漏らした。
――こんな形であの「地球」に来ることになるとはな・・・。やれやれだぜ。――
――こうして3つの光は地球へと降下していった――
――NASAが地球に降る3つの「流星」を確認したのはそれからすぐの事だった。時間にして2016年6月の事である――
ゴオオォォォォ・・・。
たった今貫いた巨大ロボットの爆炎を背に受けて、赤いボディーを持つ巨人が佇んでいた。
大きさは8メートル位で、人型のプロポーション、顔も人のように鼻と口がある。
巨人が手に持っていた剣を一振りさせると、それは変形して銃の形となり、開いた右足の側面に収納した。
その足元には4人の人間がいた。白衣を着た老人に長身の女性、小学生位の少年と少女だ。
皆それぞれに助かったことを喜んでいた。それも当然だろう。日常では決してありえないことが起こったのだ
から。
いきなり巨大ロボットが2体現れて目の前で壮絶な戦いを繰り広げたのだ。助かったことが本来なら奇跡的な
のだ。
そんな4人に対して赤い巨人が口を開いた。
『ツバサ、任務は完了した。ケガは無いか?』
彼は4人―というよりその中の少年に向けて言ったようだ。ツバサ、と呼ばれた少年が彼に答える。
「うん・・・僕らは大丈夫だよ。ありがとうゼクサー!」
少年が笑顔で巨人―ゼクサーに答えた。
『いや、礼には及ばない。むしろ感謝するのは私の方だ。私は君の持つ「勇気」のおかげで復活できたのだから。』
「僕の・・・勇気?」
翔が首を傾げる。
『そうだ。君の勇気が私に力をくれた。だから私は勝つことが出来たんだ。ありがとう、ツバサ。』
翔が少し顔を赤らめて照れる。
「そう言われると照れちゃうな・・・ハハ。」
そこへ白衣を着た老人が割って入った。
「なあ、喜ぶのはいいんじゃが・・・早いとこ此処を去った方がいいんじゃないかのぅ?」
その一言で老人を除く皆が我に帰る。長身でショートカットの女性が慌てた。
「そうよ!こんな所誰かに見つかったりでもしたら大変よ!?早くどっかに行かないと!」
今現在、付近にいた人たちは全て戦火を免れるために非難していた。この場にいるのは4人とゼクサーだけだ。しばらくしないうちにマスコミも来るだろう。こんな所を見つかったりしたら大騒ぎになってしまう。しかし翔がこの女性―斎賀 纏(さいが まつり)に言う。
「行くってどこへ?ゼクサーを置いては行けないよ!それに麗佳ちゃんだってケガしてるし。博士!車とかは無いの?」
翔はしゃがみ込んでいるポニーテールの少女、麗佳の事を気にしていた。老人のことを「博士」と呼び質問する。
「それがのぅ翔君、ワシ達の車はさっきの戦闘で壊れてしまったんじゃよ。困ったのう・・・。」
博士と呼ばれた老人―斎賀 弦十郎(さいが げんじゅうろう)―が無念そうに言った。
「どうしよう・・・・・・。」
翔を始め沈黙する一同。この沈黙を破ったのはゼクサーだった。
『!そうだツバサ。心配する必要は無い。私が変形して君達を運べばいい。』
しかし翔は被りをふった。
「無理だよ・・・僕はハンドルやシートを作ってないもん。乗れないよ・・・。」
そう、ゼクサーの体はもともと翔の作った模型なのだ。彼の本
体はエネルギー生命体で、今は翔の模型と融合しているのだ。故に今のゼクサーについては本人よりも翔のほうがよく解っていた。
彼は車の内装までは作っていなかった。たとえ変形しても運転はおろか乗ることも出来ない。だがそんな心配をよそにゼクサーは続ける。
『大丈夫。私に任せてくれ。チェィンジ!』
そう言うと彼は車の姿に変形した。
「だから無理だって言ってる・・・!」
なおも否定する翔の肩を弦十郎が抑えた。
「まぁ待て翔君。一体何をやらかすのか見てみようじゃないか。彼が本当の『勇者』ならきっと大丈夫じゃ。」
「博士・・・。」
翔が弦十郎の言葉を聞いているうちにゼクサーが行動した。
『この形に近いビークルは・・・あれか!』
ゼクサーが偶然手近にあった無傷の車に「目」をとめる。そして・・・
『走査(スキャン)!』
そう言うとヘッドライトから光が伸び、対象の車を包んだ。待つこと10数秒・・・。不意にゼクサーが照射を止めた。
そして・・・
『これで大丈夫だ。さぁ、乗ってくれ。』
ゼクサーが自らドアを開ける。その中を見た4人は目を疑った。
ゼクサーが開けたドアの中には、シートが、ハンドルが、ちゃんと車の内装部分があったのだ。
「うそ・・・すごい!」
素直に驚嘆を示す纏。彼女の一言は皆の声を代弁していた。
「何をしたのゼクサー?」
『私達にはその星のビーグルと同化する能力が備わっているんだ。今のはそれに応用を利かせて内部構造だけをコピーした。これで本来のビーグルと同じように動ける。これでいいんだろう、ツバサ?』
ゼクサーが説明をすると、翔は合点がいったようだ。
「うん!バッチリだよ!すごいねゼクサー。」
「ところで誰が運転するの?博士?それとも纏さん?」
素朴な疑問を麗佳が口にする。それには纏が答えた。
「私が運転するわ。お爺ちゃんの運転だと日が暮れちゃうもん。」
「日が暮れるとはヒドイのう。安全運転と言ってくれい。」
2人の掛け合いに翔と麗佳が笑った。当の弦十郎は憮然としている。
「お爺ちゃん、ところでどこへ行くの?」
ゼクサーに乗り込みながら纏が尋ねた。
「ふむ、それなんじゃが・・・。1度ワシらの家に戻ろう。そこで翔君やゼクサーさんに見せたいものがある。」
弦十郎が何か思わせぶりな口調で言った。
「わかったわ。それじゃみんな乗って!善は急げ。さっさと退散するわよ!」
こうして1台の「車」になったゼクサーの運転席に纏、助手席に弦十郎、後部座席には翔と麗佳が乗り込み、彼らは一路弦十郎の家へと向かった。
・・・・・・ちなみに現場周辺にマスコミが現れたのは、彼らが消えてからきっかり3分後だった。
この世界のどこともつかぬ異空間。辺りは闇に包まれている。決して光を受け入れることの無い「闇」。そんな中に「それ」はあった。
例えるならば、中世ヨーロッパにでてくるような巨大な城、だろうか。堅牢そうな「城壁」、まっすぐそびえ立つ「塔」。何より堅く閉ざされた「城門」が目を引く。そこには確かに人の気配がした。
しかし中の住人は「人間」ではない。闇に生を受けし者達だった。
今、「城」の廊下を歩く「男」がいた。長身痩躯で肌の色は蒼く、何より全身から溢れる、触れるものを全て切り裂いてしまう―そんな殺気が特徴的だった。その男―エイジスの前に1人の人影が立ちはだかる。
それは女性の姿をしていた。浅黒い肌に青く長い髪、最低限の部分しか覆っていない露出度の高い服装、街を歩けば大騒ぎになるような美貌の持ち主だが、背中の蝙蝠と天使を足して2で割ったような黒い翼が、彼女が人ではないことを現していた。その女性―レザードがエイジスに声をかける。
「なっさけないねぇ。あんだけ大見得切っときながらそのザマかい?だらし無いにも程があるよ。」
ハスキーな声でレザードがエイジスを罵倒する。エイジスも黙ってはいなかった。ドスの聞いた声で反論する。
「うっせえ!まさかあいつがいるとは思わなかったんだよ!」
「あいつって誰さ?」
レザードはゼクサーが地球にいたことに気づいていなかった。声を荒げながらエイジスが言う。
「あいつだよ!宇宙警備連邦のクサレ勇者だ!あの胸の星・・・間違いねぇ。」
レザードが驚きもあらわにエイジスに聞く。
「勇者ぁ!?オルティアは何も言ってなかったじゃないか。なんだってそんなのが・・・。」
「俺が知るか!!くっそう・・・オルティアの野郎、フカシやがって!おかげで俺の大事な『操機(アード)』を1体失っちまったんだぞ!あの野郎・・・只じゃおかねぇ!」
エイジスが憤慨していると、そこに第3の人影が現れた。大柄でがっしりとした体型をくまなく悪魔の様な形をした鎧で覆っている。
顔も兜を被っているために表情は見て取れないが、尋常ではない「気」を放っていた。
「私が・・・どうかしたのか?」
低く、若干くぐもった声でその人物はエイジスに尋ねた。その姿を見た瞬間にエイジスの顔色が変わる。
「てっめえオルティア!てめえがフカシこいた所為で操機を失っちまったじゃねーか!どうしてくれる!」
騎士―オルティアに憤慨したエイジスが詰め寄った。当のオルティアは涼しい声で答えた。
「私が何を騙したと?貴様の操機がどうかしたのか?」
「よくもヌケヌケと・・・!テメェが勇者の事を隠してたから操機がやられちまったんじゃね―か!」
殴りかからんとするエイジスの腕をつかんで「やめなよ!」とレザードが止めるが、エイジスのその一言でオルティアの声が変わった。
「勇者!?今勇者と言ったのか?奴らが地球に現れたのか!?」
今までの落ち着いた態度が一転して、逆にエイジスを問い詰める。毒気を抜かれたエイジスが後ずさりながらそれに答えた。
「お・・・おう。勇者といっても1匹だけだけどよ・・・。赤い色して剣を持ってたぜ。お前も知らなかったのか?」
「ああ。知ってたらとっくに教えている・・・。」
それっきり口を閉ざし考え込むオルティア。突然、何かに気づいたらしく顔を上げた。その瞳にはまぎれも無く狂気の色が混じっている。
「赤い色・・・剣・・・・・・。もしや奴か!そうか・・・奴が地球に・・・クックック。そうか・・・。ハッハッハ!」
そう言って笑い出す。レザードが恐る恐る声をかけようとするが、先に声をかけたのはオルティアの方だった。
「エイジス、もう一回チャンスが欲しいか?」
笑いをこらえるような口調でエイジスに尋ねた。エイジスはその一言で再び憤る。
「当たり前だ!次は叩き潰してやる!」
「次は何を出すつもりなのだ?同じ操機は無いのだろう?」
そう、オルティアの言うとおりエイジスの持つ「操機」は1体ずつしか無かった。「操機」は特殊な技法で作られた機動兵器であり、そのために同じ機体を量産することは出来ないのだ。全部で13機ある内、一体を失ったため残りは12機という事になる。
「『ラーヴィス』と『ラズリス』を出す。今度はマジで殺ってやるよ!」
エイジスの言葉に気合が入る。オルティアが残念そうに言った。
「そうか、悔しいが『あのお方』の命で私は他に用があるのでな。エイジス、『召喚銭(サモン・チップ)』を出せ。私が力を貸してやる。」
「何する気だ?詫びのつもりかよ?」
そう言いながら懐から500円大のチップ2枚を取り出すエイジス。前に使ったのとは色違いで、深い青と水色をしていた。
「まあな・・・。フフフ・・・・。」
・・・・・・エイジスから召喚銭を受け取ったオルティアの笑いが辺りに響いた――
「さて、もうそろそろいいでしょう。ねえ、あなた一体何者なの?」
戦闘が起こった市街地からしばらく進んだところで、変形したゼクサーの車内で唐突に纏が聞いた。運転をしたことで気が少し落ち着いたのだろう。
『先程も言ったが、私の名はゼクサー。宇宙警備連邦の辺境銀河警備隊に所属している。』
「宇宙警備連邦?なにそれ?」
今度は麗佳が尋ねた。足の痛みも引いてこちらも落ち着いたようだ。ゼクサーが説明する。
『宇宙警備連邦と言うのは、その名が示すとおり複合組織なんだ。もともと宇宙には数々の警察組織があった。だがそれと同じくらいの犯罪組織もいたんだ。私が追っているのもその中の1つだった』
「『だった』?何で過去形なんじゃ?」
ゼクサーの一言に弦十郎が反応した。彼はゼクサーの言った矛盾に気づいたらしい。
『以前、とある警察組織に報告があったのだ。「全宇宙の犯罪組織が結託し始めている」とな。私が追っていた 組織もその中に入っていた。』
「なんでそんなことが・・・?」
纏の問いに対する答えも含めてゼクサーは続けた。
『すまない。それはまだ言えない・・・。』
堪えるようにゼクサーが言う。
「なんじゃ、つれないのう・・・。」
『申し訳無い。この事に関してはトップシークレットなんだ。許可が無ければ教えることは出来ない。』
「なら仕方ないのう。で?結託した組織に対してあなた方はどうしたんじゃ?」
『あ、ああ・・・。当然こちらも黙って見ている訳ではなかった。そのことにいち早く気づいたある宇宙警察を中心に、親交のあった2つの組織が各銀河の警察組織に呼びかけて1つの対抗組織を立ち上げた。』
「それが、宇宙警備連邦?」
『そうだ。宇宙警察の隊長だった方を総監として生まれたのが宇宙警備連邦だ。全宇宙の平和を護る。我々にとってそれが全てだ。』
誇らしげにゼクサーが言った。自然と言葉に力がこもる。
「ところで博士、博士の家ってまだなの?」
ふいに麗佳が尋ねる。ゼクサーの話を聞いていたら街からかなり遠ざかっていた。このまま進むと町外れの山の中に入ってしまう。
「なに、もうすぐそこじゃよ。ほら、見えてきた。」
「どこどこ?・・・・・・えぇっ!?」
弦十朗が指差した先を見た途端、翔が驚いた。
「博士の家って・・・あのお屋敷なの?」
弦十朗の家―それは巨大な洋館だった。それは山を背にして建っていた。驚いている翔と麗佳に弦十朗が言った。纏によると、元々斎賀家はここら一帯の地主なのだそうだ。
「あれは我が家の敷地の一角に過ぎんよ。纏、そのまま研究所の方へ行っとくれ。そっちなら麗佳君のケガも診れるからのう。」
「OK、解ったわ。」
弦十朗の指示で、一行は洋館へは行かずに山の中へと入っていった。
山の中腹に翔達一行が向かっているころ、神楽ヶ丘市内には再び異変が起ころうとしていた。
雲1つ無い青空から一点の染みのような物が現れる。それは見る間に大きくなると人の形になった。エイジスだ。
彼は空の上でひとりごちる。
「フン、オルティアの奴は何を考えてんだ?もったいねぇが仕方ねぇ。とりあえずあのチップは使わずに・・・。」
オルティアから今回の作戦を聞いたエイジスは、不信がりながらも懐から4枚の「召喚銭」を取り出した。先程の物とは色が違う。彼はその4枚を上に放り投げた。
「来やがれ!操機『アーメイズ、ガーネスト、オーファル、エメラディア』!!」
そう彼が叫ぶと、前回と同じように暗雲が空を覆い、その中から人型機動兵器―操機(アード)が降りてくる。
赤紫に近い色で、軽装な装甲がその素早さを物語るアーメイズ。
炎のような色をしたボディに、肩から2門の大砲を生やした4つ足のガーネスト。
青緑っぽい装甲でこれといった火器も持たず、両腕が大きいオーファル。
緑を基調とした人型のデザインで、右手に巨大な剣を持ったエメラディア。
「ったく、4体も使うハメになるとはな・・・・・・まあいい。よーしお前ら!とりあえずこの街をぶっ潰せ、勇者共をおびき出すんだ!!」
エイジスの命令で、4体はそれぞれに破壊活動を開始し、エイジスは虚空へと消えた・・・・・・。
神楽ヶ丘市内にエイジスが再び現れた頃・・・・・。
「うわぁ!広いなぁ。」
山の中腹にある弦十郎の研究所の広さに、翔はただただ驚くばかりだった。
「博士って、ホントに『博士』だったのね・・・。」
同じように麗佳も驚く。何故か纏が自分の事の様に言った。
「お爺ちゃんはね、ロボット工学の権威なの。ただの模型屋さんじゃないのよ。」
研究所は山をくりぬいてその中に建てられたもので、山自体が研究所といっても過言ではない。中は何階層かにフロアが分かれている。今翔たちが居るのは第2階層。入り口である第1階層の下だ。
彼らはそこの一室にいた。その部屋には色々な医療用機器があり、ちょっとした病院の治療室よりも立派だった。
無論、麗佳の足の手当をするために来ているのである。今彼女は椅子に座っている。先程弦十郎の手当が終わったところだ。
ちなみにゼクサーは1階層で待機していた。
「どう麗佳ちゃん、足の具合は?」
心配そうに翔が尋ねる。麗佳はクスッと笑って、
「このぐらい大丈夫よ。博士のおかげで痛みもほとんど無いわ。」
そう言って翔のほうを向く、すっかり元気も戻っていた。
「うん、博士のおかげだね。ところで纏さん、博士はどこに行ったの?」
翔は纏に尋ねる。弦十郎は麗佳の治療が終わるなり、「ちょっと下に行く」と纏に言い残し部屋を出て行ってしまったのだ。
「う〜ん、多分4階層のラボに行ったと思うんだけど・・・・ごめんね。私もココの事は詳しくないの。詳しいのはお爺ちゃんと、この施設を作った人くらいなのよ。」
そう言って困った顔をする纏。その時、部屋にあった内線電話が鳴った。纏がそれに出る。
「あ、お爺ちゃんだわ。・・・・ハイ、何お爺ちゃん?・・・・・・・えっ!?それホント?・・・・うん、判ったわ。すぐ行く。」
そう言って電話を切る纏。2人に向き直り、
「また街にロボットが出たんですって!翔君、お爺ちゃんが呼んでるわ。私と一緒に来て!麗佳ちゃんはここで待ってて。」
そう言って纏は麗佳を残して部屋を出て行った。
「博士!またロボットが出たったホント!?」
第4階層にある弦十郎のラボ――ラボというよりは特撮番組に出てくるような『司令室』と言った感じの部屋だ―に入るなり、翔が尋ねた。
「うむ。これを見てくれ。」
そう言って弦十郎は正面のモニターのスイッチを入れる。映し出された報道番組の映像の中で、4体のロボットが暴れ回っていた。
「またあいつらだ!ゼクサーに知らせてこなくちゃ!」
踵を返す翔、だが思いがけないところから声がかかった。
『ツバサ、私ならここにいるぞ。』
「えっ!?どこ?」
辺りを見回す翔、するとラボの壁が開いて・・・・・。
「あっ、ゼクサー!何で!?」
壁の向こうにビーグル形態のゼクサーがいた。
「ワシが彼からもっと話を聞くために下ろしたんじゃよ。もうこの事件も知っておる。今も翔君を呼んだのは彼なんじゃ。」
ゼクサーがそれに続ける。
『私がこの星で戦うためには君が必要なんだ。私と一緒に来て欲しい。無論安全は保障する。』
それに反対する声があがった。
「だめよ!翔君はまだ子供なのよ!?そんな危ない事できるわけ無いじゃない!!」
さっきのショックを思い出したのか、纏がむきになって反論する。しかし・・・・。
「行きなさい、翔君。今の君にしか出来ない事じゃ。」
「お爺ちゃん!?」
これには纏が驚いた。弦十郎も自分の味方をすると思ったのだ。
「なぁ纏、今車に轢かれそうになっている子供を助けられるのがお主だけじゃとしたらどうする?お主が行けばその子供が助かるとしたら?」
「そんなの助けるに決まってるじゃない!・・・・・・あ。」
「そういうことじゃよ。」弦十郎が続ける。
「街の人たちが傷ついておる。相手は巨大なロボットじゃ。あれを止められるのは、皆を救えるのはゼクサーだけなんじゃよ。そしてゼクサーを復活させたのは翔君じゃ。どうやら彼は翔君の命令しか聞かないようだしのう。これはゼクサーと翔君にしか出来ないことなんじゃよ。」
「でも・・・・・判ってるけど、それでも!」
纏が食い下がる。そこに翔が言った。
「ボク・・・僕やるよ!」
「翔君、ホントに行くの?」
心配そうに見下ろす纏に、翔は力強くうなずき返した。
「そう・・・ならもう何も言わないわ。けどコレだけは約束して。危なくなったらすぐに逃げるのよ。いいわね?」
「わかったよ纏さん。ゼクサー!行こう!!」
『了解!!私が自分で走るから乗ってくれ。急がないと街が危ない!』
この一言に纏が不満げな声を漏らす。
「・・・・・・自分で走れるならさっきもそうして欲しかったわ・・・・・・。」
しかしこの声を聞いたものは誰も居なかった。
翔がゼクサーに乗り込む。すると丁度ゼクサーの居たところがターンテーブルになっていて180度回転した。そしてターンテーブルごと下に下降すると、目の前には地下道が現れた。弦十郎が言う。
「この地下道をまっすぐ行けば町外れの交差点の上に出る。ゼクサー、翔君。君達に任せたぞい。」
『ゼクサー・発進します!』
そう言い残し、フルスロットルで走っていった。
ゼクサーの中で、翔は彼に話し掛けていた。
「ねぇゼクサー、僕にもゼクサーが地球に来た理由教えてくれないの?」
『あぁ、すまない・・・・・。 !?地球?ツバサ、今地球と言ったのか?』
翔の「地球」という言葉に反応してゼクサーが頓狂な声を上げた。そう、彼は気づいていなかった。この星はどこか別の知的生命体が存在する惑星だと思っていたのだ。今度は翔が驚く番だった。
「えっ!?気づいてなかったの・・・・・・?」
『知らなかった。私がこの星に来たのは偶然だったからな・・・・。』
こうしてゼクサーは地球に来たいきさつを翔に語り始めた。このとき弦十郎がこっそりと仕掛けておいた盗聴器で会話の内容を聞いていた事は誰も知らなかった。
交差点の信号が全て赤になる。すると中央が開いて中から赤い車―ゼクサーが飛び出してきた。そのまま道路に着地したゼクサーを皆が目を丸くして見送っていた・・・・・・。
ちょっと走らせているとすぐに研究所のモニターで見たのと同じ光景が目に入る。そう、4体の巨大なロボットが暴れているあの光景だ。
現在は街の破壊活動ではなく、迎撃にやってきた日本国自衛軍と交戦していた。戦況は圧倒的に4体のロボットが有利で、自衛軍の戦車やドリルタンク、大型の武装トレーラーなどがどんどん破壊されていく。隊員の士気も完全に下がっていて、後方では背中を向けて一目散に逃げ出す者もいた。このままでは壊滅するのは時間の問題だろう。
そんな光景を見たゼクサーはかなり手前で止まり、翔にここで下りるように促した。
「でも、ココで降りたら僕の声が届かないよ!」
心配そうに翔が言う。すると助手席側のダッシュボードが開いて中から何か出てくる。それは赤く携帯ゲーム機のような形をしていた。
『ツバサ、それは「ヴァリアブルコマンダー」だ。通信機だと思ってくれればいい。それを使えば君の声は届く。さっきもマツリに言われたからな。君を戦闘の只中に置いておくと後で何をされるかわからない。』
ちょっと苦笑してゼクサーが言う。そして続ける。
『これは私が見込んだ人物にしか渡さない。私には他に部隊の仲間がいるんだが・・・・・。ツバサ、君には我々の隊長になって欲しい。』
これにはさすがの翔も驚いた。
「僕が・・・・隊長?いきなり何を・・・。」
『私達の部隊には隊長がいないのだ。君の勇気があれば必ずできると私は信じている。別に今すぐに答えを出す必要は無いさ。そうだな・・・・コレが片付いたら答えを聞かせてくれ。』
あまりに唐突な物言いに翔は呆然とするも、一応うなずいてゼクサーに促され車を降りた。すると・・・・。
車の中心から前面が持ち上がり、天井だったところからつま先が現れ足を形成する。
リアのドアより後ろが左右に分かれ広がり、側面が開き折り畳まれていた腕が出てくる。
ボディー下部が上下に伸び、胴体になると同時にロボットの頭部が現れる。
光が止むと、あっという間に赤い車は真紅のボディーを持つロボットに変形した。
『チェーンジッ!ゼクサーッ!!』
『さあツバサ、私に命令を!』
変形を終えたゼクサーが言う。翔が戸惑いながらもうなずいた。
「僕はまだ隊長になるつもりは無いんだけどなぁ。でも今はそんな事言ってる場合じゃないもんね。よしゼクサー、あいつらをやっつけて!」
ゼクサーが力強く返答する。
『了解!!』
ゼクサーは、4体のロボットに向かい駆けていった。
最初にこちらに迫ってくるゼクサーに気づいたのは、赤いボディに4つの脚、両肩から巨大な大砲を生やしたガーネストだった。
ガーネストがこちらに大砲を向ける暇を与えずにゼクサーが懐に飛び込んだ。長距離戦をメインとした機体は大抵近接戦闘に弱く、ガーネストも例外ではなかった。
『てやぁっ!!』
ゴガアッ!!
ゼクサーが身体を深く沈めて放った強烈なストレートパンチを喰らい、体制が傾いだところに後回し蹴りを受けてガーネストが横に吹き飛ぶ。それに気づいた他の3体―アーメイズ、オーファル、エメラディア―が倒れたガーネストに駆け寄った。
(全部で4体か・・・・一度に相手をするには数が多い・・・!)
身構えるゼクサー。そして足元の自衛軍に向かって言った。
『こいつらはあなた達では無理です!街の人達を非難させて撤退してください!!』
撤退、の一言に自衛軍の隊長が顔色を怒りで真っ赤にさせたが、ゼクサーの言い分が正しいと判断したらしく、破壊された車両などを置いて撤退していった。
そうこうしている内に体制を立て直したガーネストが両肩の大砲をゼクサーに向ける。ゼクサーも脚に装備されているゼクサーマグナムを抜こうとするが・・・、
『ムッ、1体足りない!?どこへ・・・・』
ガシィッ!!!
『な、何っ!?』
いつの間にか後ろに回りこんでいた赤紫色のアーメイズがゼクサーを羽交い絞めにした。そこへさっきのお返しとばかりにガーネストが大砲を撃ち込む。
ドンドンドンドンッ!!
当たる直前にアーメイズがゼクサーを放すも、この距離では到底回避はできなくゼクサーは大砲の直撃を受ける。
『ぐわあぁっ!』
よろめいてる所にさらにエメラディアとオーファルのコンビネーションが追撃する。オーファルの拳がゼクサーの胴体にめり込み、止めとばかりにエメラディアの大剣が襲いかかる。
『くぅあっ!』
必死で避けるも右肩の装甲を持っていかれその勢いで吹き飛ばされるゼクサー。横にあったビルに叩きつけられてそのまま動かなくなった。
アーメイズが彼の前に立ち、手に持っていたエネルギーライフルを連続でビルと、無情にも動かないゼクサーに撃ちこんだ・・・・。
「ゼクサアァァァッ!!」
翔の叫び声が辺りに響きわたる。彼はゼクサーの忠告を無視して彼はすぐそばまで来ていたのだ。さっき出会ったばかりなのに、翔はゼクサーを心からの友人のように思っていた。そのゼクサーが今は動きを止めて敵のいいようにされている。翔は手に持ったヴァリアブルコマンダーで必死に呼びかけた。
「ゼクサー、ねぇしっかりしてよゼクサー!立ち上がってよおぉ!」
しかしやはり何の反応も無い。そして眼前ではエメラディアが介錯とばかりに大剣を振り上げた。翔の絶叫が辺りに木霊した――
「やめてえぇぇぇぇっ!!」
エメラディアの剣が振り下ろされようとした、まさにその時!!
――オラアアァァッ!――
突如として空から落ちてきた光の球が高速でエメラディアに激突した。無防備な状態だったのでたまらず吹き飛ばされる。その時に翔の耳に怒声のようなものが聞こえたのは気のせいだろうか?
答えは―――否。
翔が上空を見上げるとそこにはエメラディアを吹き飛ばした“青い”光の他に2色の光球が浮かんでいた。あの宇宙空間にいた3色の光――宇宙警備連邦の刑事だ。青い光球が声を荒げる。
――おぅテメェら!好き勝手やってくれてんじゃねーか!――
いささか乱暴な口調で青い光球が言う。黄色の光球がそれに続く。
――我々が来たからには、もう貴様らのいい様にはさせんぞ!!――
やたらと真面目な口調の黄色い光。緑の光球が最後に言い放った。
――ゼクサーが受けた分、俺達が10倍にして返してやるぜ・・・・!――
その言葉を合図に3つの光球がそれぞれ自分に見合ったビークルを見つけるために別れた。宇宙空間ならともかく惑星内ではエネルギー体の状態では思うように力を振るえないのだ。最初に見つけたのは青い光のマッハガンナーだ。路上に乗り捨てられた“青い”スポーツカーに向かう。
――おっしゃぁ!融合だぜっ!!――
光と車が1つになる!!
眩い青い光が辺りを包み、光が晴れた時には、スポーツカーがすでに変形を終了させてそこに悠然と立っていた。スマートな体型のロボットが立っている。
『チェインジッ・マッハガンナーッ!!』
――自分はあれにするであります!!――
そう言って黄色い光が向かったのは自衛軍が放棄した“黄色い”双頭のドリルタンクだ。それに向かう光。
――おおぉ!融合!!――
光とドリルタンクが1つになる!!
眩い黄色い光があたりを包み込み、光が晴れた時には、ドリルタンクがすでに変形を終了させてそこに昂然と立っていた。両肩から天に向かって2本のドリルがそびえ立つ。
『チェンジッ!グランガンナーッ!!』
――俺はあれにしよう。――
緑の光が見つけたのは“ダークグリーン”に塗られた自衛軍の大型武装トレーラーだ。それに光が重なる。
――融合っ!!――
光とトレーラーが1つになる!!
眩い緑の光があたりを包み込み、光が晴れた時には、武装トレーラーがすでに変形を終了させてそこに堂々と立っていた。両足と左肩にミサイル、右肩には長大なキャノン砲を装備している。
『チェンジ!!ビッグガンナーッ!!』
三体の巨大ロボットがゼクサーを庇うように立ちはだかる。マッハガンナーが4体の操機に向かって言った。
『俺らの仲間にたいそうなマネしてくれたじゃねーか・・・只ですむと思うなよ!』
その時グランガンナーが足下に目をやった。そこには翔が立ってこちらを見上げている。グランガンナーが声をかけた。
『少年、ここは危ないから早く非難するであります!』
翔は答えない。もう一度グランガンナーが同じ台詞を言おうとした時、「それ」が目に入った。
『!っ、少年、その手に持っているのはもしやヴァリアブルコマンダーか!?』
他の2体がその一言に反応した。
『何ィ!?ヴァリアブルコマンダーだとぉ!?』
『こんな少年をゼクサーは選んだのか・・・・・。フッ。アイツらしい。』
ビッグガンナーが続ける。
『坊主、俺たちは宇宙警備連邦、銀河辺境警備隊所属の「ガンナーズ」だ。君がそれを持っていると言う事は、我々の隊長であるという事になる。命令してくれ。』
翔はやっと合点がいった。彼らは自分の、ゼクサーの仲間なのだ。それに気づいた途端、翔の心に熱いものがこみ上げる。すると―――
「うわっ!ヴァリアブルコマンダーが・・・・・光ってる!?」
今翔の手の中で、携帯ゲーム大の通信機だと思っていたものが光っている。おもむろに翔がそれをかざすと・・・・・・。
―――辺りが赤い光に包まれた―――
―――続く―――
次回予告へ
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あ と が き
作者(以下作):と、いうわけでお待たせしました!勇者戦記 ゼクシード第二話「銀河の三銃士」ついに登場です!
マッハガンナー(以下マ):登場です!じゃねーだろ・・・!
作:ぅわビックリした!?何でオマエがココにいるの!?
マ:ビッグの旦那に言われたんだよ。テメェのあとがきはネガティブだから俺がフォローしに来てやったんじゃね―か。感謝しな。
作:か、感謝って・・・まぁ確かにそうかも知れんが・・・・。
マ:ところでよ。今回の俺の活躍の場はアレだけか!?
作:うん♪(さわやか)
マ:て、テメェ・・・・・第一サブタイトルと内容がイマイチ合ってねーじゃねーか!!
作:うっ!それは・・・・
マ:それは?
作:何かいろいろ盛り込む事が多すぎて・・・・見せ場次回にまわしちゃった♪てへ。
マ:盛り込む事ぉ!?
作:うん。敵のアジトでの会話や翔達への説明とか。
マ:敵・・・・『惑星砕き』か・・・。
作:ホントはそういう名前じゃないんだけどね(ぽつり)
マ:何か言ったか?
作:いや何でも!
マ:んで結局のところ次回はどうなるんだ?
作:次回はついに待ってましたのゼクシードが登場します。そして敵の目的なんかも少しずつ明らかに!
マ:とりあえず次回はサッサと原稿上げろよ!リヒトさんも迷惑すんだから。
作:お・・・・おぅ・・・。
2001年11月 動輪 剣太郎&マッハガンナー